C
解説(吉野 仁)でも書かれているが、今作はミステリー色がかなり薄い。しかし、それでつまらなくなるという事はなく、独特な物語を経てさっぱりしたラストへ着地する楽しさは健在。
ただ、爽快感ならミステリーだった時にも楽しめていた。推理要素をなくしてそれが強まったとも思えない。
また各編のつながりも、いつもの作品間リンクのようにゲスト出演する程度で、『死神の精度』のようなおもしろみはない。
水準はクリアしているけどやや物足りない一冊。
あと、暁子(P99)と誓子(P148)の外見が似ているのは私の気にしすぎか?
C
題材となるテクノロジーをこれほど見つけてくる取材力もさることながら、そこからアイディア・ストーリーを膨らませる力がすごい。アレンジを加えたりまったく別の使い方を見つけたりと感心させられる。
ただ、やはりまだこなれていないのか続刊(『2000年のゲーム・キッズ』)に比べると良くわからないオチに走ったり、イマイチなできのものが見受けられる。
また書き下ろしの2章3章については完全に1章より劣っている。上気した欠点がモロに出ており、残念なできと言わざるを得ない。
C
まず、この本が10年以上前に書かれている事に驚き。モデルとなっているのは今ですら信じられないような技術ばかりだ。このうちどれだけが実用化されているのだろうか。
また、中には小説中の絵空事そっくりなものが現代に存在するのもおもしろい。『友達バー』なんてインターネットの掲示板にかなり近い内容ではないか。
もちろんショートショートとしてもなかなかのできなのだが、ちょっと気になったのが後述する2編の説明不足。
『器用な奴』はたぶんこれと同じトリックで、『簡単な指令』は地下鉄サリン事件なんだろうが、人によってはわからないだろう。
D
真実の追求ではなくいかにして陪審を傾かせるかをメインにした戦略性溢れる法廷劇は、検事補である作者だからこそできた要素だろう。
明らかに公平とは思えない判事等リアル(だと思われる)な裁判模様も良い。
ただ、少々長ったらしいのが難点か。上巻序盤など削っても構わない部分もあったと思う。
あと、犯人は予想できなかったものの、バラし方が良くないのかさほど驚けず。一気にドーンと明かした方が効果的だったのでは?
また、『イニシエーション・ラブ』ほど濃くはないものの、妙にエロティックなシーンが散見されるのも人を選ぶか。
C
『依存』に次ぐタックシリーズ。
『盗まれる答案用紙の問題』…良作。好奇心を煽る謎と予想外の真相が〇。
『見知らぬ督促状の問題』…ラストの展開が秀逸。本書ではこれがベストかな。
『消えた上履きの問題』…謎解きではなく物語として、真相がおもしろかった。
『呼び出された婚約者の問題』…微妙。謎は悪くないがイマイチおもしろくない。
『懲りない無礼者の問題』…上に同じくイマイチ。最後の最後のやつも滑ってる。
『閉じ込められる容疑者の問題』…タックが来る所をなくして、真相解明の戦慄で終わった方が良い。
『印字された不幸の手紙の問題』…これがワースト。意外性が足りず、結論もあいまい。
『新・麦酒の家の問題』…鑑識の死亡推定時刻に矛盾は出ないのだろうか?
あと、イラストがね…タック・タカチはまだしもボアン先輩とウサコが酷い…。
D
『そして夜は甦る』に始まる沢崎シリーズに多大な影響を与えたと思われる作品だが、あまり好きになれなかった。
挑発されて相手をどなったりするマーロウより、淡々とした沢崎の方が魅力的に感じる。
ストーリーは前半のテリーに関する話と後半のロジャーに関する話であまりつながりが感じられず、また全体的に退屈に感じた。
終盤の展開は良かったが、もう少しスッキリさせられたのではないか。
あと、エイモスという同じ名前の人物がなぜ二人いるんだ…。
なお、『ロング・グッドバイ』という新訳版も発売中。
C
『覚悟の扉』に次ぐ、TRPG『ダブルクロス』リプレイアライブシリーズ第二弾。
苦い話に渋い主人公となかなか私好みの一話目。これまで読んだ4つの中では一番お気に入り。マキエにスティングとなかなかエグイネーミングも〇。
2話目は物語の大きな流れを予期させる終わり方。ジャームでも理性的に行動するものがいるというのは新しい発見だった。
とりあえず、1巻で疑問を感じていた部分について解決してスッキリ。
I LOVE YOU/伊坂 幸太郎/石田 衣良/市川 拓司/中田 永一/中村 航/本田 孝好
C
『透明ポーラベア』…伊坂節炸裂。奇妙な姉がおもしろい。ただ、恋愛物としては…?
『魔法のボタン』…「ファンタ・オレンジほど~」と独特な文章。
『卒業写真』…おもしろいけど、わかりづらさの方が印象に残った。
『百瀬、こっちを向いて』…展開がおもしろく、終盤の一捻りも良い。これがベスト。
『突き抜けろ』…これまた恋愛小説と呼ぶのか…。青春物として読んでもイマイチ。
『Sidewalk Talk』…希望を感じさせるラストは良かった。が、別れようとするのもやり直そうとするもの“そんな理由で?”と感じてしまう。恋愛ってそんなものなのかな?
D
『実況中死』 に次ぐ、神麻シリーズ第三弾。
『念力密室!』…神麻さんと保科の出会うくだりが、まぁまぁ笑える。
『死体はベランダに遭難する』…一話目の犯人がわかりやすかったぶん、楽しめた。
『鍵の抜ける道』…やられた。行きで使えなくて、戻ってきた時には使えるという発想はなかった。
『乳児の告発』…犯人がわかりやすい。余談だが、P269「とーっても頼もしい」やら三話目の泣き落としに対する慌てようやらで能解警部のイメージがだいぶ変わった。
『鍵の戻る道』…聡子を混ぜるためだけに書いた印象。事件解決がやっつけな感じ。
『念力密室F』…私が短編を一作ずつレビュー(ブログ転載前にこれを書いた時点で)するのは“雑誌に単体で載る=それのみで一つの作品として読める”と判断しての事だが、これは書下ろしだし内容的にも評価見送りが妥当だろう。
C
『クラインの壺』にかなり近い設定だが、話そのものは大きく違う。
クラインの壺がハイテク技術を取り巻く人々のやり取りを扱っているのに対し、本作では仮想世界内の冒険を描いている。
そのため終盤重視のSFミステリーだったクラインの壺に比べて、アクションシーンが多く全体がムラなく楽しめる。
難点は、ページ数ゆえかあっさり終わった感があり、やや物足りない所。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
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エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。