シゴフミ ~Stories of Last Letter~/雨宮 諒/ポコ
C
死者との対話ではなく手紙を選んだセンスは〇。
読後感は『死神の精度』の『死神と藤田』に近かった。
ただ、本作はどちらが勝つのかわからないところがミソ。P259で文伽の言う「愚問ね」は“どちらが勝とうともこの試合が両者にとって楽しく素晴らしいものである事に変わりはない。ここでの本質は勝敗ではない”と読み取ったが…どうだろうか?
あと、絵が妙に頭でっかちなような…。
D
P69「~百八個くらい」とある事から『時計館の殺人』を意識していたと思われるが、内容は遠く及ばなかった。
謎の回答は意外だし、トリックも独創性があって良いと思う。だが、小出しにしているため驚きは弱い。
ストーリーの方も風呂敷を広げて、そのまま放りっぱなし。世界の終わりはどうなるの? 真夜中の鍵は誰? 余韻を持たせたと言うより、結末付けを放棄したように感じる。
あと、男でミキって名前は良くあるのか? 「彼」と代名詞が出るまでずっと男か女か迷っていたのだが…。
C
すごいけど、そんなにおもしろくはないかな。
一つ目のオチは文章の不自然さもあって簡単に読める(「千鶴」の章にはやられたが)ものの、二つ目は見事にやってくれた。
トリック自体はありがちかもしれないが、使い方が非常にうまい。この発想はなかった。トリックの新しい可能性を示すものではないだろうか。
ただ、私が軽くネタバレをくらっていたのを差し引いても衝撃はあまり強くない。伏線もしっかりしていて、十分予想外だけど、それで話がどう変わるかと言えば犯人当てにちょこっと使われるだけ。
あと、最後の生存者は人それぞれ、ネットでも諸説ある模様。私としては『黄金の羊毛亭』さんの説がしっくりきました。右上の「ネタバレ感想」という所をクリックすれば読めます。
C
金田一耕助シリーズの一部らしいが、これだけ読んでも特に問題はなかった。
『本陣殺人事件』…長いよ。「ソア橋事件」のネタバレもマイナス要素。『8の殺人』といいネタバレ好きに愛好されてるのか?
『車井戸はなぜ軋る』…この真相は読めなかった。一番好きな話か。
『黒猫亭事件』…ミスリードがうまい。顔のない屍体かと思ったら…。最初のやりとりにやられた。
トリック等より事件全体のストーリーを楽しむ作品か。
D
『さらば長き眠り』に次ぐ、探偵沢崎シリーズ第四弾兼新探偵沢崎シリーズ第一弾。
原さん年食って丸くなっちゃったのか?
行動や情景を淡々と重ねつつその端々に心情を浮かばせ沢崎をハードなヒーローに仕立て上げていた従来の作品に対し、今作では心理描写が多用され凡百の主人公と変わらなくなってしまった。
ニヒルな文章にもどこかキレが出ず、読んでいるだけで楽しいという本シリーズ最大の魅力を減じさせている。
それらの要素を第二部への変異と見るべきなのか、ただの失敗と見るべきなのかは判断しかねる。
後記で「短時間で書くことができたことは、本作につづく新シリーズの第二作、第三作の早期の刊行をもって証明するつもりです。」と言っておきつつ5年経った今も次巻が出る様子はない。
C
事実に反しない言い回し≠伏線、だと思う。
これだけ捻れた世界を書き切り、小説として完成度高く成立させただけでも作者の力量が窺える。
しかしながら、最初に書いた理由によりオチの衝撃は小さい。上手に避けているなぁと感じさせる場面は山ほどあるのだが、真相が明かされた瞬間“だからああだったのか”と思わせる場面はほとんどない。
また“主人公の物語作りへの徹底”も描かれたため、結果として読者が気づくのはほぼ不可能なあざとさが弊害として出てしまった。
しかし…これ売り上げランキングで上位に入ってたけど、人を選びそうな内容の本で有名になっちゃうと後で苦戦しそうでやや心配な作家である。
ネタバレぎりぎりの余談だけど、読んでいて『幻想主義』という本を思い出した。あのヒロインを重症にしたのが、この本の主人公なのかな。
C
『花緋文字』…どんでん返しが良かった。
『夕萩心中』…少々長いが、こちらも良作。
『菊の鹿』…動機が独特だが、ある程度の説得力はきちんと持たせている。
『陽だまり課事件簿』…人間模様中心で謎解きがイマイチに感じるがおもしろかった。課長の家庭にも救いを…
文章が巧いのはあいかわらず。また、同シリーズの話が入っているため『戻り川心中』(どちらか片方だけ読んでも支障なし)と同じように叙情的な表現が苦手な人がいるかもしれない。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。