オチョナンさんにキューコン女と1巻は秀逸な話が多かったが、それ以降は『誘怪犯』の劣化版のような話が増えていった。
ストーリーで怖がらせようとしているのだが、あえて尻切れトンボにするという作品コンセプトはそのままなので無駄に長いという印象にしかならない。
全巻セットで見ると前作『不安の種』の方が良いが、1冊単体ではこちらの1巻に軍配が上がるかな。
でも、この作品はできるだけたくさんの話を読んで自分の日常に近い話を見つけて楽しむものなので両方読んだ方が良いと思われる。
『地獄少女 閻魔あいセレクション 激こわストーリー』からできの悪い作品を寄せ集めたような本。
話が怪談として怖くないうえ、変なひねり方で妙にわかりづらい。
またメッセージを物語にうまく入れ込めておらず、作者の主張を伝えようとしているのだと思われる部分は粉物がダマになっているような感じ。平たく言えば説教臭い。
1話がそこそこの長さのわりに満足感はなく、かといって無駄なところが多いわけでもないため単に話がおもしろくないのだろう。
絵も下手。
B
日常が舞台の短編ホラーというと『誘怪犯』を思い出すが、あちらがストーリーで怖がらせていたのに対してこちらは絵で怖がらせる内容。
ホラー映画よりも日常にフッと異物が入り込む心霊映像的なものが好きなら本書は気に入ること必至。
リアルな絵と幽霊の造形はすばらしいが、霊の出現を効果的に見せるのに終始する作品なため満足度は高くなりづらく、飽きもきやすい。なにより印象に残る話がある程度ストーリーを感じさせるものばかりというのが作品コンセプトの欠点をよく表している。
C
男の倒錯っぷりが目を引き、皮肉のきいたオチ(デートで相手を退屈させてふられる様を想起させられる)の第6話『創物主の檻』が個人的ベスト。『アンデッド』と同じ設定ながら表現の上手さでより強い切なさを感じさせる第3話『生死者の聾』も良かった。
話と話でつながりがあるのだが、別人だけど描き分け不足で似てる人間がいたのは難(3話の奥さんと4話の少女と5話ラストの少女)。
あと作者の趣味と思われるが、少女の裸体がほぼ全話に出るのも人を選ぶか。
予断だが、この本のタイトルの読みは“かくとしのゆめ”だそうで。作者に聞いたところこころよくお答えいただけた。
B
頭脳戦のおもむきすら感じさせる策略と難波のいやらしい笑みは『ONE OUTS』を思い出させる。
元メーカー営業の作者は自分が難波のような人間なら会社を辞めなかったとコメントしているが、これは現実離れしたヒーローがいてやっと平和が保てるほど当時のメーカーが追いつめられていたということではないか。
会社と言うきわめて現実的な舞台なのでありえないと冷めた目で見てしまう人にはあわないだろうが、味もそっけもないタイトルとは裏腹に楽しめる1冊だった。
A
動機や設定が少し特殊なものの、ストーリー自体はよくある友情物。
だが、描き方がとてもうまく、ありがちな話でも自然に感情移入させてくれる。毎回見せ場を大ゴマにするというシンプルな演出ですらここまで効果的に使えるのは実力のなせる技なのだろう。
絵も『ラブロマ』より見やすくなっており、癖を個性にまで煮詰めている。
完成度の高い作品だっただけにラストの駆け足は残念至極。終盤の話があまりおもしろくないのがその思いを強くさせる。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。