忍者ブログ
趣味で書いているレビューをネットに転載
[280]  [279]  [278]  [277]  [276]  [275]  [274]  [273]  [272]  [271]  [270
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『旧校舎の殺人階段』

次は私ね。
えっと、まず自己紹介でいいんだよね。
1年G組の福沢玲子でーす。
よろしくー。
坂上くんだったよね?
突然こんな事聞いて悪いんだけどさ、坂上くんって誰か殺したい人いる?
……そうだよね。
もし本当にいたとしても「僕は誰々さんを殺したいです」なんて言うわけないもんね。
冗談冗談!
そんな顔しないでよ。
でね、もう一つ聞きたいんだけど、坂上くんさ、誰かに殺されるような心当たりはない?
……そうだといいけどね。
わかんないよ。
人を殺す理由なんて恨みだけとは限らないんだし。
もしかしたら人間の死に関する研究をしてる人がいて、そのために坂上くんを殺そうとするかも……。
きゃー、怖い!
え?
どうしてそんな事を聞くのかって?
……坂上くんは大丈夫かなと思ってさ。
もしも坂上くんが今の質問に心当たりがあったら、私の話をしっかり聞いてね。
でないと大変な事になっちゃうから。

これはまだ旧校舎が使われていた頃の話なの。
その時の生徒に日坂さんと水元さんって人がいたんだけどね。
この二人、ものすごく仲が悪かったんだ。
生まれた時から憎みあってたのかってくらいにお互いの事が嫌いだったの。
同じ教室にいるのも嫌だったんじゃないかな。
でもね、二人とも大人だったんだよ。
できるだけお互いに関わらないようにしていたんだ。
先生も二人の席を離したりしてね。
なんとかトラブルを起こさずに毎日を過ごしていたの。

ある日、日坂さん用事で帰るのが遅くなっちゃってね。
教室を出た時にはもう外は真っ暗だったんだ。
学校には自分しかいないんじゃないかってくらい静かでね。
物音一つしないの。
聞こえるのは日坂さんの足音だけ。
旧校舎だから歩くたびに廊下がギシギシ鳴ってね。
まるで自分以外にも誰かがいるような気がするんだよ。
怖くって、日坂さんは急いで帰ろうとした。
そして階段の上に着いた時、暗い物陰から何かがぬっと現れたの!
日坂さん驚いて悲鳴上げちゃってさ。
そしたら、その人影も悲鳴を上げたんだ。
よく見たら水元さんだったのね。
彼女も今から帰るみたいだった。
脅かさないでよ、って言おうとしたけど日坂さん黙ったんだ。
言ったらケンカになっちゃうからね。
水元さんも同じ事を考えてるみたいだった。
結局、二人はお互いを無視して階段を降り始めたの。
別の階段を使って帰ったり、降りる時間をちょっとずらしたりしてもいいんだけどね。
やっぱり怖かったんだよ。
真っ暗な校舎に一人でいるよりは、たとえ嫌いな人でも誰かにいて欲しかったんだよ。
いつも通り、お互いに関わらなければいいだけだしね。

でも、夜の学校の魔物がそうさせたのかな。
運悪く、その日は些細な事でケンカになってしまったの。
女の子だから殴り合いとかじゃなくて口げんかなんだけどね。
止める人がいないからどんどんエスカレートしちゃったんだ。
このままじゃいけないと思った日坂さんは、無理やりケンカを切り上げて帰ろうとしたの。
水元さんほっといて、さっさと階段を降り始めたの。

でも、水元さんにはそれが気に入らなかった。
無視されたように感じたのかな。
自分の事を馬鹿にされたと思ったのかな。
とにかくカッとなっちゃったんだよね。
日坂さんの背中を思いっきり突き飛ばしたの。
いきなり後ろから押された彼女はそのまま階段を転げ落ちてね。
その日のうちに死んじゃったんだ。
水元さんもそのせいで学校を辞める事になった。
人を殺しちゃったんだから、当たり前なんだけどね。

それからだよ。
旧校舎の階段に日坂さんの霊が出るようになったの。
嫌いな人と二人っきりであの階段を降り始めるとね、声が聞こえるんだ。
「今がチャンスだよ」
「あと、27段……」
「あと、19段……」
「ほら、もう踊り場まで着いちゃった。
あと、14段……」
って。
日坂さんが語りかけてくるの。
その時に相手を殺すと絶対にうまくいくんだって。
日坂さんが守ってくれるから誰にも見つからないんだよ。
でも……もし下に着くまでに相手を殺さなかったら、逆にその人が日坂さんに殺されちゃうんだって。
怖いよね。

でもさ、私、思うんだ。
きっと日坂さんは純粋に親切心でやってるんだって。
先に手を出さないと、日坂さんみたいになっちゃうよって……。

え?
親切ならどうして何もしなかった人を殺すのかって?
わかんないかなあ……。
口封じだよ。
だって、何もしなかった人をそのまま帰してさ、お払いなんかされたらたまらないでしょ?
「この階段には悪霊がいる!」
なんて言ってさ。
ほら、他人は信用できないから……。
言っておくけど、私じゃなくて日坂さんがそう思ってるって話だからね。
これで私の話はおしまい。
次は誰が怖い話を聞かせてくれるの?

→3話目へ

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
name
title
font color
mali
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
プロフィール
HN:
三枝
性別:
非公開
趣味:
読書・映画・ゲーム
自己紹介:
S
稀に見る傑作。

A
おもしろい。

B
まあまあ。

C
標準ランク。人によってはB。

D
微妙。

E
読むのが苦痛なレベル。

F
つまらないを越えた何か。

×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。
最新CM
[04/03 未入力]
[05/04  ]
カウンター
P R
忍者ブログ [PR]