アマガミ考察１

アマガミ考察１　橘純一は疫病神なのか？

 

ネタバレあります。

アマガミのヒロインって主人公と付き合わない方が幸せになってないか?
ゲームをやっていて誰もが感じるであろう疑問だ。
水泳で部内の選考落ちだった七咲は県大会優勝、梨穂子はアイドルデビュー、薫は絵の才能が開花…。
スキルートでは平凡な女子高生だった彼女達の、ソエンルートでの輝きぶりを見て驚いたユーザーは少なくないだろう。
隠しキャラを除けばヒロインの半数が一人身でより幸せな人生を送っている事になる（幸せの定義については人それぞれだろうが、ここでは私の幸せ観に則って書いていく）。
なぜこんな事になっているのか？
それはスキルートが“二人が同じ目標に向かって全力投球するルート”だからだ。

“今年こそは楽しいクリスマスにしよう”主人公が最初に立てる目標である。
恋人と楽しいクリスマスを送ろう、と。
この目標は好きあった２人が互いに協力する事で始めて達成される。
目標に向かうのが橘だけであってはいけないのだ。
彼のみが一人空回りした結果はゲーム開始早々プレイヤーに提示される。
そしてきちんと２人で手と手を取り合って目標を達成できたのがスキBESTエンドなのだ。

この“目標”という視点でヒロイン達を見ていくと上記した疑問も解決する。
具体的に書いていこう。

桜井　梨穂子
ゲーム序盤から主人公に思いを寄せるヒロイン梨穂子。
彼女はクリスマスデートをすっぽかされようが翌日にはあっさり告白を受け入れ、アイドルになった後も「ずっと心に決めている人が居る」（１１・０２）と“純一と過ごすクリスマス”を夢見続ける。
徹底的に主人公と同じ目標を持ち続けるヒロイン、それが桜井梨穂子なのだ。

中多　紗江
理穂子と同じように早々と“良いクリスマス”という目標を持つ紗江。
しかし、彼女のルートはアマガミのどのヒロインとも異なるちょっと特殊な内容になっている。
というのもゲーム中で唯一“クリスマスを一緒に過ごそうとしたヒロインを主人公が突っぱねている”のが紗江ルートなのだ。
橘と過ごすクリスマスという目標を見つけ、デアイの段階で告白までしてしまう紗江。が、橘は彼女と過ごすクリスマスに乗り気になれない。あまつさえナカヨシルートでは彼女に新たな別の目標を与えてしまう。ナカヨシエンドの中で彼女だけが恋愛関係にならないのもそのためだ。

棚町　薫
バイトに遊びに友達付き合い…と忙しい青春を送る薫。
ゲーム開始時点では彼女は何の目標も持っていない。
いわばこの６週間が彼女の自分探しとなる。
そこに自分のアプローチを滑り込ませる事ができるか、というのが彼女のルートだ。
だから、スキルートでは彼女の才能は開花しないし、ナカヨシルートではライバルである美術が少しだけ顔を覗かせるのだ（４２・２０）。

森島　はるか
薫と同じように目標こそないものの充実した高校生活を送る森島先輩。
だが、彼女の立ち位置は薫のそれとは少々異なる。
というのも、彼女の場合は成長の伸びしろがもうほとんどないのだ。
他のルートではヒロインと橘両人共に何かしら人間としての成長を見せる場面があるが、森島先輩だけはただ毎日を楽しく過ごして終わってしまう。彼女のシナリオで成長するのは橘だけなのである。
彼女は主人公にとっての目標と言って良い。
目標に向かって二人で全力投球と書いたが、彼女の場合すでにゴール地点手前で手を振っているようなものなのだ。
ゲーム終盤まで彼女ができなかった橘が夢想する憧れの先輩であり、別の男子と付き合い始めたように見えるとソエンルートですら“もしもっと頑張っていたら”という希望をに見せる森島先輩。
そんな彼女が唯一自分だけの目標を獲得するのがスキBADである。
仕事という目標を見つけてしまった彼女はもう二度と橘と目標を同じにする事はないだろう。

七咲逢
上記したヒロイン達はどれも目標を持っていなかった。
では、もし既に目標を持っている人間をパートナーとして選んだらどうなるか？
それを示したのが七咲ルートだ。
水泳という目標に１年生としての生活をつぎ込んできた彼女だが、橘を好きになり目標がシフトしてしまったら…結果は部内の選考落ちだ。
「代表メンバーに選ばれて、先輩そう報告したいんです……」水泳すら恋のツールとして使ってしまった末路と言えるだろう。

上崎　裡沙
クリスマス直前になって告白してくる彼女も“スキEND＝目標全力投球”の例外ではない。
ナカヨシルートに相当するBADエンドでは空き教室でクリスマスを過ごすはめになる裡沙ルート。
彼女はそれで良いと言っているが、ごまかしである事は明白だ。
スキルートで裡沙は気持ちの良いクリスマスを過ごすため自らの行いを清算しようとする。
クリスマス当日に“良いクリスマス”という目標のために走り始めるのだ。

橘　美也
まぁ、一番兄妹の絆が深まってるのは専用ルートだよね。

メインヒロインである絢辻詞については語りたい事が多いので別記事にまわす。

→アマガミ考察２　絢辻詞の献身