D
『魍魎の匣』に近い疲労感を残す作品。
人物や舞台等こりにこっており、人を選ぶ事請け合い。
そのわりには謎と解答におもしろみがなく、ラストの怒涛の展開も楽しめなかった。前述した疲労感や途中の退屈さから物語に引き込まれなかった事もあると思う。
これだけの要素を結合させ無駄なく使った完成度の高い作品だろうし、小説として含む所もたぶんにあるのだとは思うが、娯楽として見るとこのランク。
あと、最後に入っている野崎六助の長文が苦痛。
C
戯曲版を読了。
映画版である『情婦』を先に観たため知っていたオチだが、映画の時は前評判の良さに期待しすぎたせいかイマイチに感じたものの、改めて見るとそう悪くもない。
地の文がほとんどないこの形式も、言葉の応酬である裁判にマッチしていると思われる。
ただ、古い作品で、しかもイギリスが舞台なため情景がかなり想像しづらいのではないか。裁判のときにカツラをつけるなんて現代日本人には想像もつかないだろう。
サクッと読めて、しっかりひっくり返してくれる『クール・キャンデー』のような作品。私はあちらの方が好みだが。
C
『陽気なギャングが地球を回す』の続編。前作とのつながりはお遊び程度。こちらだけ読んでも問題はないが、一部「?」となる部分があるかもしれない。
前作ではセリフに散りばめられたジョークが売りだったが、今作では身体を張ったギャグが中心になっており、作品全体から緊張感がなくなっている。
また、意外な展開が多かった前作に比べると、読者を引っ張る力も弱い。
余談だが、以前ネットで“「いつも田中の情報や道具に頼っていると、またか、と思われる」(P317)って映画版『陽気なギャングが地球を回す』への皮肉では?”という意見を見たが、確かにそう読める。
響野が2度も言う「誰に」が妙に意味深。存在しない誰かへの語りかけって、たいてい読者に向けられている気がする。
まぁ、映画版は田中に頼りすぎどうこう以前の問題だったが。近年の原作物邦画の欠点を全部詰め込んだようなできだった。
C
解決編まで読者に伏せられている事実が多すぎた。
アンフェアとは言わないが、そのために衝撃度が薄まっている。
この手の話は、十分な情報が伏線として出されていたにもかかわらず、そこにまったく気づけない部分におもしろみがあると思うのだが…。
言われるまで騙されていただけに残念。
また、『乱れからくり』でも触れた文章(人物)についてはまったく違和感なし。失礼ながら泡坂さんも普通の小説が書けるのかと驚かされた。
ところで、館崎には頬をふくらませるクセがあるようだが、TVドラマ『踊る大走査線』の室井さんを想像すればいいのだろうか?
バジリスク 甲賀忍法帖(1~5)/せがわ まさき/山田 風太郎
C
心理描写のない戦闘に絞った内容はおそろしくテンポが良く、後腐れなく5巻でスパッと締めてくれるので暇つぶしに適している。
反面、ストーリーはないに等しく、人物のほとんどが使い捨てでポンポン死んでいくため没入度は低い。『るろうに剣心』なんかが好きな人にはオススメか。
風景を実写にするのは、まぁ欠点にはならないレベル。違和感を覚える所もあれば、よくよく見るとおかしく感じるもののサッと読むだけでは気づかない所もある。
怪談と踊ろう そしてあなたは階段で踊る/野沢 ビーム/竜騎士07
D
『ひぐらしのなく頃に』(噂を聞いただけで未プレイ)の人が原作とあって、予想はしていたがガッカリオチ。
ちゃんとミステリーしてはいるものの、犯人のリスクがあまりにも大きすぎる(それすらも狂気の描写なのか?)。
また、脇役のセリフとはいえ「そんな馬鹿なことをする意味なんてあるわけがない」(P164)とまで言われていた行為が、最後の解決編で“実はこんな意味があったのでした”というのもいただけない。
噂が進化していく様はおもしろかったのだが…ラストではなく佐藤との会談がこの作品のハイライトか。
ホラーとしても、謎解き色が強すぎてイマイチ怖くない。
D
どの作品も雰囲気は良いが…。
『岬でバスを降りたひと』『迷宮猫』『虫師』以外は、若手の人にありがちな意味深だけど意味不明な話ばかり(私の読解力不足か?)。
雑誌に一話だけ載っているならまだしも、単行本で一気に読んでそれぞれの話の意味をじっくり考える人なんてあまりいないと思うが。
つまらなくはないが十分に楽しめるわけでもない。
ネットのレビューを読むと最近の作品とのタッチの違いを指摘したものが多く、ファンブック的な本なのかもしれない。本書だけでも絵柄の変移を感じる事はできるが。
ものすごくどうでもいい余談だが、最後の話の「「不思議な事」には大抵つまらないからくりがあったりするが 普段当たり前と思ってる事には面白いからくりがあるもんだ」という言葉に感銘を受けた。身近な雑学なんかは正にこれなのではないかと。好奇心を持ち続けていきたいものである。
C
“悪魔の右腕”の異名を持つケンカ最強高校生の右手が女の子に! という後にも先にもまずないであろう(しいて言うなら『寄生獣』+『南くんの恋人』か)ぶっ飛んだ設定に拍手。
しかし、せっかくの設定を活かすどころか美鳥の存在すら意味がないような話が少なくないのは残念。脇役メインのときならまだしも、ただのギャグ回なら正治・美鳥コンビを中心に描いて欲しい所。
それでもラブコメとして確実におもしろいと思うが。
ちなみにこのマンガやたらとパロネタが多い(それともラブコメ物の定番なのか?)。『DAYS57 マニアの鑑』(正治がコミケに連れて行かれるアレ)なんて版権大丈夫なのかと笑わせてくれた。
D
何が起こったのかまるでわからない、どうにもしようがない状況の絶望感はすごい。
どうなるんだ?何が起きたんだ?とグイグイ読者を引っ張ってくれる。
それだけに、物語としての決着を放棄したラストは残念。
せめて主人公の行く末だけでも描いて欲しかった。
ラジオの電波は届くのに増援を呼べない第二偵察隊→船が沈んだ→同じように連絡がつかない本国も日本と同じように崩壊、と一応考えてはみたもののやはりスッキリしない。
また、時間の概念があまりないため、主人公が悩まされる飢えや渇きがイマイチこちらに伝わりにくいきがした。
あと、ランクには含めなかったが、コマ割りが大きいせいかビックリするほど早く読み終わる。
C
高校程度の科学をかじっていないと理解しづらいかもしれないが、そこさえクリアすればなかなか楽しめる。
テンポの良いストーリーでさくさく読め、絵も綺麗。なんともグロテスクな魔人のデザインも〇。
また、力ではなく徹底的に頭を使って戦う主人公のスタイルが非常におもしろい。ただのトリックマンガのように解説して終わりではなく、きちんと見せ方にも気を使っている。
『いばらの王』のようなジャンル変わりをする事もなく、きっちりさいごまで人間VS怪物で通してくれて(IQ200越えを普通の人間とは言いがたいが)、身近な物・その場にある物を活用するのもポイント高し。
巻数的に少々盛り上がりが弱い気もするが、長々と続けるといかにもネタ切れで劣化しそうな内容なのでこのくらいでちょうどかもしれない。
ところで、葦原のお腹の仔はどうなったんだ…?
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。