D
時代と共に色あせてしまった名作と言った所だろうか。微妙だ…。
ひたすら調査の退屈なストーリー、上手な方ではない文章、そして発想は悪くないが読みやすいオチ。編集長の持論は露骨すぎだろう。
また、プロローグを改訂したらしいが元の方が良かったのでは? 終盤でそれがわかった時、“そりゃないぜ”と思ってしまった。おまけに解説(濱中さん)には誤字がある(P138~139→P48~49・P59→P52)。
所でこの本、昔は主人公の手記という形式だったらしいが、鮎川さんの言うクリスティの名作って『これ』かな?
S
黒澤が“LushLife”、河原崎が“RushLife”、京子が“LashLife”、豊田が“RushLife”(こいつは変わるが)、という解釈で良いのかな?
この作品のテーマであろう「一生のうち一日だけが自分の担当で、その日は自分が主役になる」という考え方が気に入った。自分の単調で退屈な毎日もどこかで起きている大きなできごとと関わりがあるかもしれない、地味な自分にもいつか主役の日が来るかもしれない、と考えると日々が楽しく思え希望が持てる。実際は平凡な毎日も十分エンジョイしてますけどね。
また、単純にエンタメとして見ても、作者の得意技であるテンポの良い文体と、不思議なストーリーが存分に発揮されておりおもしろい。
ラスト、伏線が次々と回収され、5つのちょっとした話が1つの大きな物語へと組み上がっていく様は圧巻。そのカタルシスに清々しいストーリーも合わさって、読了時の爽快感は素晴らしいものとなっている。
ちなみに今度映画化されるらしいのだが…これが映像という媒体で成立すると思えないのは私だけではないだろう。大好きな小説だけになんとも不安である。
B
「どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる……」書き出しが巧い。
事前にネタバレをくらっていたので驚けなかったものの、オチもおもしろいと思った。
ただ、全体的に長ったらしく、あまり物語に引き込まれなかった。特に手記の部分はその意味不明さもあってか、やや退屈。
文章は上手で話そのものも良いけれど、引きが弱いのは『戻り川心中』に近いか。
ランクCかで迷ったが、オチを知らなかったときの衝撃を考えてこの評価。
ところでP233「縛りあげて火を~」とあるが、縛る描写なんてあったか?
C
『ペトロフ事件』に次ぐ鬼貫シリーズ第二弾…と思って読んだのだが、改めて調べなおしてみるとそうとも言えない様子。やたらとペンネームを変えて作品を発表したせいで情報が錯綜しているようだ。勘弁してよ…。
とりあえず、本書単体で読んでも、上記の作品と合わせて読んでも問題はない。
舞台が日本になって前作(?)より格段に読みやすくなっている。また、自然と眼に入る位置に注釈を置く等の配慮をしてくれた創元社にも感謝。
内容は“これぞミステリー”と言ったところで、次々と出てくる新事実・仮説を使って小説全体で謎を解いていく。
それが退屈でないのは、無駄な要素がかなり削られているのと少しずつではあるが着実に解決に向かっているのがわかるからだろう。
ただ、真相自体はスッキリとした部類に入るのだが、小出しにされる推理が話をややこしくしている感あり。せめて最後で図でも用いてくれれば違ったかもしれない。
ちょっと人を選ぶ作品か。
ちなみに、出版されるたびにかなり手が入れられた作品のようで、本によってかなり内容が異なるご様子。私のレビューはあくまでも創元社文庫版のものとして読んでいただきたい。
D
『幻惑密室』に次ぐ神麻シリーズ第二弾。
読みやすいが、おもしろいわけではない過程。超能力の設定をうまく使っているけど、やや強引な真相(意外といえば意外だが、さほど驚かなかった)。
全体的に可もなく不可もなくといった印象。
ただ、3人の関係が結構変わっているのには面食らった。なんで時系列順で出さないかね…。
後かなりどうでもいい話だが、笹本さんの事を女だと思って読んでいたのは私だけだろうか。
B
恋愛の恐ろしい部分をまざまざと感じさせてくれる一冊。あんなに純情だった人がねぇ…。
少しわかりにくい話で、読んでから数分間考え込むはめになってしまったが、おもしろかった。
妙に生々しいエロシーンや、チープな展開(私は恋愛小説をまったくと言って良いほど読まないためさほど気にならなかったが)など好みが分かれそうな内容ではあるが、私としてはぜひ推したい作品。
なお、『ゴンゾの園』というブログでかなり踏み込んだ読み解きが行われているので、興味のある人は一読する事をお薦めする。
本当はこういう事を文庫の解説で書くべきだと思うんだけどね…いや、あれはあれで悪くないけど。ただ、私個人としては最後の一文ぐらいしか感銘を受ける部分がなかった。
D
いい話だけど推理物として見ると…。
タイムスリップで死人を助けようとするありきたりなストーリー。ややこしい時間移動の説明。『ナイフが町に降ってくる』よりもしょぼいんじゃないかと感じる真相。読んでいてつまらなくはないが、読了後の満足度は低い。
同性愛についても言いたい事だけ言って終わったって感じ。好ましく思っていない側の意見も出すべきじゃないだろうか。社会的な問題を取り上げるなら、色々な視点のから書いた方が良いと思う。
E
一言で書けば『これ』の劣化版。
どっちにもとれるのではなく、どっちつかず。謎は投げっぱなしで論理的な解釈は出されないし、ホラーとして読んでもさほど怖くない。
読んでいて苦痛にならないだけマシだが、おもしろかったとは到底言えないでき。
謎解きがないと事前に知っていたが、知らずに読んだ際の落胆は想像したくもない。
C
伊坂 幸太郎・近藤 史恵・有川 浩・佐藤 友哉・本田 孝好・道尾 秀介・米澤 穂信によるアンソロジー。
伊坂(『首折り男の周辺』)のザッピング・米澤(『玉野五十鈴の誉れ』)のキャラクターと十八番で書きあげた二人については言う事なし。
『光の箱』『プロトンの中の孤独』も奇麗にまとめられていて良し。
『ここじゃない場所』は今後書く作品の外伝か?モヤモヤしたものが残り一歩劣る。
『ストーリー・セラー』、序盤の文章が汚いのは”作品を読む事で国語力が上がる彼”という演出と取れるが、それ以前に話がつまらない。トラブルを二人ではなく彼女一人で片付けてばかりで、恋人同士好きあっているのがあまり伝わってこなかった。
『333のテッペン』はゴテゴテと飾り立てられた文章で非常にテンポが悪い。伊坂を下手にするとこんな感じになるのだろうか、盛り上げる所とサッと流す所をわけるべき。
C
『黒い仏』に次ぐ石動戯作シリーズ第三弾。
著者の博学ぶりが謎解きに絡んだのは長所ととるべきか。なるほどとは思うものの、読者が回答を出すのがほぼ不可能になっているのは…。メインの部分ではないから多めに見られるが。
どんでん返しに関しては不満が残る。反則ぎりぎりで、作中にある通り「フェアプレイもへったくれもない」し、そんな手を使わなければいけない程のオチとも思えない。
『樒/榁』は、孤独を愛するのにちやほやされる水城と、人気者になりたいのに邪険に扱われる石動の対比に笑った。ちなみに『鏡の中は日曜日』のネタバレが含まれているので注意したい。
しかし、帯の文句「石動戯作を殺したことを少しも後悔していない」「名探偵、最後の事件!」とはずいぶん巧く言ったものである。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。