C
複雑怪奇という言葉がピッタリの百鬼夜行シリーズ第2弾。
長大な紙束にみっちりと詰め込まれた文には無駄な部分などなく、広げに広げられた風呂敷が終焉に向けて畳まれていく様は圧巻。
ただ、謎の壮大さに比べて結末がスケールダウンしてしまったのは残念。メインであろう美馬坂の研究についても伏線がなかったような…。
また、文庫版(前作『姑獲鳥の夏』のレビュー参照)の便利レイアウトもなく、解決編の頃には疲れて驚く気力もなくなっているのもカタルシスを減じさせ、”長々と付き合わせてコレかよ”感は否めない。
ちなみに、映画化・マンガ化・アニメ化とシリーズ最高傑作と呼ばれるにふさわしい人気ぶりを誇っている。
C
謎めいた展開とアッと驚くオチの『テレビショー』が個人的にベスト。『宇宙通信』も良かった。
氏の作品で大人気の『処刑』も収録されている。
『ボッコちゃん』よりもメッセージ性が強い分、エンタメとしての楽しさはあちらの方が感じやすかったか。
なお、あとがきで時事風俗と密着した題材を避けている旨が書かれているが、私もそれには賛成したい。『探検隊』は今読むとかなり理解しにくい作品だろう。
C
二転三転の表題作。最初から最後まで笑わせてくれる『ある東京の扉』(個人的ベスト)。やられた!と驚く『依子の日記』。
文章力と人間ドラマは『戻り川心中』が上だが、ストーリーはこちらの方がおもしろかった。
ただ、動機のほどんどが痴情のもつれというのはね…。些細な点ではあるが。
もう一点。『変調二人羽織』、客の数が5人だったのは結局なんだったんだ?
C
文章がとても美しい。このくらい素人でも書けるのでは、と(実際に書くのは難しいのだが)思ってしまう文章の作者もいる中、この人の文体はまさにプロの仕事。とてもマネできる気がしない。
内容は本格的なトリックを楽しむというより、トリックと融合したストーリー・人間ドラマを見せるタイプの本。
『桔梗の宿』が個人的にはお気に入り。
難点は文体ゆえやや人を選ぶ点。気楽に読書をしたい人には向かない点。後、読者を引き込む力が少し弱いように感じた。
余談だが、作者名を変換しようとした所”恋情”という言葉を発見した。恋愛を扱った作品が多い人(だと思う)だけに、ペンネームの由来はこれなのではないかと思うのだが…真相はいかに?
C
もしも宇宙人が地球に攻めて来たら…軍隊と宇宙人の戦争に終始しそうなアイディアだが、本作ではその世界を一般人の視点からリアルに描いた内容となっている。
火星人が地球に下りたらどうなるのか、それに対する地球人の反応、リアリティーを追及しながらも迫力のある戦いのシーンもしっかりと用意されている。
ラストも気に入らない人がいるとは思うが、私個人としては支持したい。
難点は、海外の小説である以上しかたないのだがなじみの無い地名ばかりでわかりにくい事と、書かれてから時が経ちすぎた現代では人類の道具が貧弱に感じられ火星人の強さを実感しづらい事。
後クラークさんよ、「楽しみがそこなわれることはないはずだ」とか言ってるけど、これから読もうという人間にオチをばらすのはその作品を貶める行為だろう。
予断だが、もう少し詳しく語るならスピルバーグ監督の映画版とは全然内容が違う。あちらが戦闘ヘリやらなんやら出ていたのに対して、原作小説は大砲でドーン!だ。ストーリーも大幅に改編されてるしね。
C
他人から見た一人の人間の人生が語られるのは『白夜行』に近いおもしろさを感じた。
他者の視点からつむがれる物語では淳の心理がわからず、行動だけを見せる事でその異常さを引き立てている。
五つの文体で書き分けられていというのも良い。
ただ、肝心のオチは今一つ。いくつも仕込んであるので当たり外れが出てしまった。
ちなみに新潮社文庫でも出版されている。が、記事を書くに当たって調べた所、私が読んだ講談社文庫版共々絶版になっている模様。自分が読んだ本が今では手に入らないというのはなんとなく寂しさを感じさせられる。
C
『すべてがFになる』に次ぐS&Mシリーズ第二弾。
人物の掛け合いがおもしろく、トリックも前作のような無理は感じない。伏線も前作よりはうまく隠している。
ただ、ネタはややありきたりか。萌絵の行動に思わず突っ込みたくなる部分が多く、キャラクター小説としてやや暴走した感あり。
しかし、服部珠子が殺された理由はあんまりだな…。
C
超大作であった前作『時計館の殺人』に比べるとやや地味だが、決してつまらなくはないと思う。
伏線の多さはシリーズ随一。カバー絵にまで伏線があるのは驚いた(風見鶏)。
欠点は途中で真相にある程度予想がついてしまう事。毎度のごとくこんな感じなのだが…どうにかならないのだろうか?
後、ちょっとトンデモ系に片足突っ込んでるかもしれない。
C
煮詰められ、無駄なく仕込まれた物語の完成度は非常に高い。
しかし、ヒス女の暴走にしか見えない四章終盤や、事件を通して学んでいくというより自分に都合の良いよう意見を翻しているようにしか見えない主人公に感情移入できず、いまいち楽しめなかった。
少年犯罪についても良く調べられてはいるが、やはり手垢のついた題材でどこかで聞いたような話ばかり。
同じ方向性なら『13階段』の方が数倍おもしろかった。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。