B
館シリーズ最高傑作と名高い第五弾。
トリックが逸品。よく思いついたと感心した。物語へのトリックの組み込み方がうまいと言った方が正確か。
館を建てた者の狂気や誰が死ぬかわからないスリルもシリーズ一。
残念なのは衝撃度の低さ。露骨にヒントを出すのでオチはなんとなく見当がつくし、登場人物が真相に近い仮説を立ててしまうのも意外性を減らす。伏線が良くできていただけにおしい。
しかし最初にも述べたように、このトリックの見所は明かされていく真相が物語にピタリと組み合っていくその美しさ。まさに”パズルのピースがピタリとはまった”という比喩にふさわしい小説。
ちなみに、この巻のみ双葉文庫からも発売されている。
B
切ない話だが軽快な文体と気の利いたセリフのおかげで暗い雰囲気にはなっていない。
今作は推理の要素を強くしているように感じた(元々そういうタイプの作家ではないというのを踏まえてだが)。
P149の「壁に落書きをする人間」ってたぶん『重力ピエロ』の春なんだろうな。
ちなみに映画化済み。
D
学生時代に国語の課題でラストシーンだけを読み、その爽快感に当てられた。
が、買って読了し幻滅。禁煙の場所でタバコを吸う主人公と人に水をかけても逆切れするその仲間。同じように夢を追う物語に『ロケットボーイズ』があったが、この話の主人公にはホーマーのような謙虚さが足りずどうにも好きになれなかった。
『多輝子ちゃん』もありがちな話で印象に残らず。
二編共に若気の至りがテーマなのかもしれないけどどうにも受け付けなかった。
ちなみに、私は未見だが映画化されている。
ロケットボーイズ2(上・下)/ホーマー・ヒッカム・ジュニア(武者 圭子) <単行本>
C
あいかわらず本当に実話なのかと疑いたくなる程ドラマチック。
ただ、冴えない奴等がロケット作りに挑戦する前作(『ロケットボーイズ』)に比べるとおまけ感が否めない。
また、いつの話かわかりづらいのもマイナス。解説で言われてやっと時系列を理解した。何年の話とは書いてあるけど、そんなものいちいち覚えながら読んでる人いるのか?
なお、続編である『Sky of Stone』はいまだ翻訳されていない模様。
C
『水車館の殺人』に次ぐ、館シリーズ第三弾。
目次やあとがき、さらには奥付けまである凝った作中作は評価。
ただ、内容の方はイマイチかな。宇多山夫妻は作者の知り合いである宇山日出臣さんがモデルだろうから犯人ではないだろうし、島田潔も除外…と考えると容疑者が少なすぎる。オチも使い方がうまくないし、最後のやつもなんとなく読める。
それとこの本、他作のネタバレをしていないか? 『Xの悲劇』なんてトリックがどうのこうの言っているが…。
予断だが、贅沢を言わせて貰えば”稀譚社文庫”にしたり表紙についての記述を変えたりして欲しかった。
C
雪山の山荘で殺人事件とオーソドックスな展開だが、オチはなかなか珍しい。使い方も上手で、おもしろいと思った。
ただ、その性質上難しいとは思うが、メインのオチが(少なくとも私が見た限り)伏線なしというのは痛い。
また、推理を全部ラストに持ってきたのも×。このやり方なら所々で小出しにした方が読みやすい。
予断だが、『十角館の殺人』に始まる館シリーズを明らかに意識したこの本のカバー。どうせならノベルズではなく文庫に似せれば良いと思うのだが…。
C
『十角館の殺人』に次ぐ館シリーズ第二段。
前作が強烈な一発だったとすれば、今作は並の連発か。ひたすら詰め込んであるトリックと伏線は良い。
だが、露骨過ぎて簡単にわかってしまうものがあり、犯人もバレバレ。たくさん入れた事により質に差が出てしまった感がある。
とは言え、前作の欠点であった小説としてのおもしろさも幻想的な雰囲気等で改善されておりこれはこれでおもしろい一作になった。
なお、こちらも新装改訂版発売中。
C
目が覚めたら謎の地下シェルター。室内には4人の男女。この中の誰かが殺人犯なのか…。シチュエーションが秀逸。
過去の回想と現在の脱出劇共に緊迫感があり先へ先へと進みたくなる。
が、『クラインの壺』の時にも感じたがこの作者オチが弱い(二作しか読んでいないのにこんな事を言ってしまうのは良くないかもしれないが)。
前はSFだから気にならなかったが、推理物でこれは不満。
D
前作(『8の殺人』)のように人をいじめて笑いを取ろうという姿勢がないので気持ちよく笑える。主人公3人が人に迷惑をかけなくなったのも○。
私は作者の言う「百人に一人」の真相を見破れなかった人間だが、正直あまり驚けなかった。
冒頭の文章は単に話を短くまとめるためにつけられたようで。あれを使って読者を騙せばなかなかおもしろいと思ったのだが…。
なお、『そして誰もいなくなった』のネタバレ(前作のような気づかいもなし)によりワンランクダウン。同業者としてなんとも思わないのかねぇ?
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。