C
毒殺犯そっくりの妻・密室から消えた死体・壁を通り抜けた女と謎が魅力的(壁抜けについてはなんとなくわかったが)。
それらの不可解な出来事が論理的に明かされていく場面は唸らされた。が、ラストのオチは微妙。読んだ時にはわけがわからなかった。試みとしては良いのだが、もう少しわかりやすくしてもらえればなぁ…
余談だが、私が読んだ時とは表紙が変わってしまった。『ミステリー・推理小説データベース』で1994年重版となっている物(今現在で一番上)だったのだが、あちらのデザインの方が好みなだけに残念。
B
やはり特筆すべきは、発行当時大論争を巻き起こしたと言われるオチだろう。事前にバラされていたため読んで驚くかしらけるかはなんとも言えないが、個人的にはありだと思う。
ただ良くも悪くも衝撃的なラストで、納得できない人がいるのもわかる。
余談だが、探偵が絶対正義として扱われる終わり方に時代を感じた。『オリエント急行の殺人』の時にも思ったけど。
ちなみに、トリック自体はこの人以前に同じ事をやった作家がいたらしい。実際に読んだわけじゃないから”らしい”としか言えないし、ネタバレに繋がるからタイトルも書けないけどね。
追記:あまりにもアレな書き方なので、つづきの所に書いてきました。
B
事前にバラされていた(ええ、あのマンガのせいですよ)ため驚く事はできなかったが、このトリックはすごい。
今まで見てきた中でもトップランクのでき。これから先、こんな素晴らしいトリックにはなかなかお目にかかれないだろう。十年に一度出るか出ないかの大トリック。
欠点はノベルズ版と違って「図9」に名前が振られていない等いくつかあるが、やはり一番は小説としての読みにくさ。3つ出てくる手記はどれも苦痛と言えるレベルで(「電話帳を読まされたみたいだ」とあるので、少なくとも最初のは意図的なようだが)、緯度と経度の謎解きも読んでいてうんざりさせられた。
ちなみに、新書ではあるが完全版が出されている。
C
前作『そして夜は甦る』同様魅力的な主人公に良質なストーリーが加わった感じ。
真相はシンプルだがなかなかのインパクト。登場人物も前作より把握しやすく、全体的に読みやすくなった。
身代金を届けるシーンや終盤で犯人を追うシーン等、緊張感・疾走感があるのも○。
ただ、結末がシンプルゆえにやや地味に思える。
D
『仔羊たちの聖夜』に次ぐ、タックシリーズ第5弾。
このシリーズにしては珍しく三人称だが、読みやすさは変わらない。タカチの過去が明かされ、シリーズ物としてのおもしろさが出てきた感じ。
ただ、メッセージ性を強くしすぎた気がした。「カマっけのない男はほんとはいない」には首をかしげる。謎解きの部分、推理しているところはいつも通りだが真相は×。トリックはなかなかだが、動機・過程に無理がある。
はっきり言って、タックシリーズにキャラクター物とミステリーどちらを求めるかを試す踏み絵のような作品。ミステリーとしてはまるでダメ。
妙に性的な話があったり、推理物としてのできを他の要素でカバーしようとしたりと最近の西澤作品の傾向が出始めている一冊。
なお、例によって幻冬舎から新装版が発売されている。
C
「推理小説史上初のトリック」とあらすじに書かれるだけあって、完璧にひっくり返された。発想自体は他にも思いつく者がいそうなものだが、それをきちんと作品として作り上げられるのは実力の賜物。
難点はオチのバラし方。ああしなければ理解できないのは確かだが、”~ページ~行”を連発するのは鮮やかさに欠ける。おまけにこれまでの流れを最初から最後まで長々と解説してくれるため、解決編が退屈という推理物として致命的な欠陥を持ってしまった。
あと、ロートレックの絵が掲載されてるのは良いけど、できれば当該ページのすぐ近くにして欲しかった。まとめてあるから、わざわざ戻って説明を読んだり絵を見たりでやっかい。
The Book jojo’s bizarre adventure 4th another day/乙一/荒木 飛呂彦 <単行本>
D
戦闘部分はまさに”ジョジョ4部”。オリジナルの人物・スタンドでここまでできるのはさすがの一言。
4部好きならぜひ読んでおきたい一冊(所々に出るジョジョネタをファンサービスと見るか作者の自己満足と見るかは微妙だが)。後手後手に回りがちな解説のため原作未読者にはややきついと思われる。
やたらとひらがなの多い文章が気になるものの、原作人気に甘える事なくきちんとしあげられた作品…だったがP204の「コミックスを読むと~」やP211の「漫画の連載当時~」といった読者を引き込むのを放棄した愚行にワンランクダウン。
B
「クライン2」によるゲームの描写は、いきなり話が変わるため別世界に放り込まれたように感じさせる。そういったSF要素で読者を引きつけつつ、行方不明者の発生という本筋を進めていく。特に目立った欠点のない良作。
オチが少し弱いのと、単行本ではあった”契約書の汚れ”がないのが残念な部分か。
もっともこの本を評価するにあたって”仮想世界に入るという今となってはありきたりになってしまった設定にも関わらずしっかり楽しませてくれる””単行本の初出が1989年にも関わらず古臭さを感じさせない”という二点を伝えれば十分かもしれない。それだけで本書がいかに優れているかという事がおわかりいただけるだろう。
B
『麦酒の家の冒険』に次ぐシリーズ4作目。個人的にはタックシリーズ最高傑作。おちゃらけた雰囲気で引き込み、それを一変させる解決編・真相の意外性・小説としての主題、どれも他より頭一つ抜きん出ている。
覆される事実と一気につながる伏線に大満足。鳥肌物の狂った動機もすばらしい。
ただ、あまりの重さに人を選ぶような…。ここまで哀れな被害者もなかなかいないだろう。
ちなみに幻冬舎から新装版が出ているが、個人的には角川版が好み。影山さんの絵がいい味出してるんだよねぇ。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。