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火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1) 火刑法廷/ジョン・ディクスン・カー

 

C

 

 

 毒殺犯そっくりの妻・密室から消えた死体・壁を通り抜けた女と謎が魅力的(壁抜けについてはなんとなくわかったが)。

 それらの不可解な出来事が論理的に明かされていく場面は唸らされた。が、ラストのオチは微妙。読んだ時にはわけがわからなかった。試みとしては良いのだが、もう少しわかりやすくしてもらえればなぁ…

 余談だが、私が読んだ時とは表紙が変わってしまった。『ミステリー・推理小説データベース』で1994年重版となっている物(今現在で一番上)だったのだが、あちらのデザインの方が好みなだけに残念。

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8の殺人 (講談社文庫)8の殺人/我孫子 武丸

 

E

 

 ユーモラスで明るい内容なのは○。登場人物も個性的なので楽に覚えられる。真相も結構意外。読みやすくテンポも良い。

しかし、作者注や密室講義でスピードダウン。あれは必要ないだろう。

主人公達もやたらと他に人物に迷惑をかけていて不快。

トリックも微妙。菊一郎殺しは読めてしまった。

できとしてはDランク程度なのだが、「注12」による他作のネタバレによりワンランクダウン。

「ネタをばらされたくない人のため」の注だが、ネタバレがあると書かなければどのみち読むだろうに。

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迷蝶の島 (1980年)迷蝶の島/泡坂 妻夫 <単行本>

 

D

 すらすらと読める文章と、そこそこのストーリー。

トリックはかなり地味。小細工と言って構わないだろう。

特別悪いところはないが、特別良いところも見つからない。しいて言うならヨットの用語が多い所が難点か。

途中の展開でもトリックでも良いから、もう少し目を引くような部分が欲しかった。

 

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消失! (講談社文庫)消失!/中西 智明

 

B

 

 騙しを追求した一冊。トリックのうち一つはネタバレをくらっていたが他は完璧にやられた。全てを見破れる人はなかなかいないだろう。オチに特化したミステリー。

ただ、小説として見ると粗が目立つ。イマイチなストーリー、読みにくくはないが素人目にも上手ではない文章。オチも人によっては脱力物かもしれない。

難点はあるものの、どんでん返し好きならオススメ。

ちなみに、新書版が再販されている。私は中古書店を探し回ってなんとか手に入れたが…。

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アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アクロイド殺し/アガサ・クリスティー

 

B

 

 

やはり特筆すべきは、発行当時大論争を巻き起こしたと言われるオチだろう。事前にバラされていたため読んで驚くかしらけるかはなんとも言えないが、個人的にはありだと思う。

ただ良くも悪くも衝撃的なラストで、納得できない人がいるのもわかる。

余談だが、探偵が絶対正義として扱われる終わり方に時代を感じた。『オリエント急行の殺人』の時にも思ったけど。

ちなみに、トリック自体はこの人以前に同じ事をやった作家がいたらしい。実際に読んだわけじゃないから”らしい”としか言えないし、ネタバレに繋がるからタイトルも書けないけどね。

追記:あまりにもアレな書き方なので、つづきの所に書いてきました。

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神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)神のロジック 人間のマジック/西澤 保彦

 

C

 

事前にネタバレをくらったが、オチについては悪くないと思う。伏線が多く、設定も上手に使えている。

ほとんど仮説と設定ばかりの途中はやや退屈。

最近の西澤作品の中では良作の部類か。

個人的には実習の解答が気になったかな。

ちなみに単行本が出された際、同時期に刊行されたある小説とオチが同じという事で話題になった。同じレーベルじゃ出版の配慮が足りないとも言われるわな…。

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文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)姑獲鳥の夏/京極 夏彦

 

C

 

 

厚いがそのぶん濃い内容を堪能でき、見開き最後で文が終わるようになっているレイアウトや文章力で読みやすさを確保している。

オチを事前に聞かされた時はトンデモ系ミステリーかと思ったが、実際読んでみると話の流れ・伏線で説得力があるように感じられた。

しかし、いくら伏線等でがんばっても、このオチで納得できない人は0にはならないだろう。

 

 

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占星術殺人事件 (講談社文庫)占星術殺人事件/島田 荘司

 

B

 

 

事前にバラされていた(ええ、あのマンガのせいですよ)ため驚く事はできなかったが、このトリックはすごい。

今まで見てきた中でもトップランクのでき。これから先、こんな素晴らしいトリックにはなかなかお目にかかれないだろう。十年に一度出るか出ないかの大トリック。

欠点はノベルズ版と違って「図9」に名前が振られていない等いくつかあるが、やはり一番は小説としての読みにくさ。3つ出てくる手記はどれも苦痛と言えるレベルで(「電話帳を読まされたみたいだ」とあるので、少なくとも最初のは意図的なようだが)、緯度と経度の謎解きも読んでいてうんざりさせられた。

ちなみに、新書ではあるが完全版が出されている。

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私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)私が殺した少女/原 りょう 

C

 

 

前作『そして夜は甦る』同様魅力的な主人公に良質なストーリーが加わった感じ。

真相はシンプルだがなかなかのインパクト。登場人物も前作より把握しやすく、全体的に読みやすくなった。

身代金を届けるシーンや終盤で犯人を追うシーン等、緊張感・疾走感があるのも○。

ただ、結末がシンプルゆえにやや地味に思える。

 

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スコッチ・ゲーム (角川文庫)スコッチ・ゲーム/西澤 保彦

 

D

 

 

仔羊たちの聖夜』に次ぐ、タックシリーズ第5弾。 

 このシリーズにしては珍しく三人称だが、読みやすさは変わらない。タカチの過去が明かされ、シリーズ物としてのおもしろさが出てきた感じ。

ただ、メッセージ性を強くしすぎた気がした。「カマっけのない男はほんとはいない」には首をかしげる。謎解きの部分、推理しているところはいつも通りだが真相は×。トリックはなかなかだが、動機・過程に無理がある。

はっきり言って、タックシリーズにキャラクター物とミステリーどちらを求めるかを試す踏み絵のような作品。ミステリーとしてはまるでダメ。

妙に性的な話があったり、推理物としてのできを他の要素でカバーしようとしたりと最近の西澤作品の傾向が出始めている一冊。

 なお、例によって幻冬舎から新装版が発売されている。

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オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー

 

B

 

 残念ながら読む前に犯人をバラされてしまった。が、そこに至るまでの推理は見事。犯人も知らなければおそらく驚いただろう。

 結末までは可もなく不可もなく。ダレるわけではないが、特別おもしろいわけでもない。次々と出てくる証言・証拠を頭に入れていくだけ。

非常にどうでもいい余談だが、私にこの名作のネタバレをしてくれたのは忘れもしないTBS。名作映画を紹介する番組で「~という犯人には誰もが驚かされました」と公共の電波で日本全国に向かってあっさりネタバレしてくれた。

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そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) そして夜は甦る/原 りょう(”りょう”は非常用漢字)

 

D

 

 

ハードボイルドは初めてだが主人公かっこいいね。常に冷静、いきの良いセリフ、ケンカになってもあっさり勝利。

ただ、ストーリーは難解。登場人物が多く、おまけに彼らのほとんどが家族関係なため覚えにくい。

そのせいか、ラストの二転三転も頭がこんがらがるだけだった。私の頭が足りないと言われればそれまでなのだが…。

なお、作者名の一部が非常用漢字なのでひらがなで表記した。

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重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ/伊坂 幸太郎

 

C

 

 

シャレている話。一風変わった登場人物、ユーモアのある会話、それらの要素が合わさって不思議な面白さができあがっている。

この人の本はどこか独特な雰囲気があるけど、それが特に強いように思えた。

ミステリーとして読む物でもないかもしれないが、謎解きの方はイマイチ。伏線は微妙だし、放火犯も勘であっさり当たる。

あと、放火犯の最後の扱いが気に入らない人がいるんではないだろうか…。

ちなみに、わずかだが文庫化の際に増やされた場面がある。

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ロートレック荘事件ロートレック荘事件/筒井 康隆

 

C

 

 

「推理小説史上初のトリック」とあらすじに書かれるだけあって、完璧にひっくり返された。発想自体は他にも思いつく者がいそうなものだが、それをきちんと作品として作り上げられるのは実力の賜物。

難点はオチのバラし方。ああしなければ理解できないのは確かだが、”~ページ~行”を連発するのは鮮やかさに欠ける。おまけにこれまでの流れを最初から最後まで長々と解説してくれるため、解決編が退屈という推理物として致命的な欠陥を持ってしまった。

あと、ロートレックの絵が掲載されてるのは良いけど、できれば当該ページのすぐ近くにして欲しかった。まとめてあるから、わざわざ戻って説明を読んだり絵を見たりでやっかい。

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The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another dayThe Book jojo’s bizarre adventure 4th another day/乙一/荒木 飛呂彦 <単行本>

 

D

戦闘部分はまさに”ジョジョ4部”。オリジナルの人物・スタンドでここまでできるのはさすがの一言。

4部好きならぜひ読んでおきたい一冊(所々に出るジョジョネタをファンサービスと見るか作者の自己満足と見るかは微妙だが)。後手後手に回りがちな解説のため原作未読者にはややきついと思われる。

やたらとひらがなの多い文章が気になるものの、原作人気に甘える事なくきちんとしあげられた作品…だったがP204の「コミックスを読むと~」やP211の「漫画の連載当時~」といった読者を引き込むのを放棄した愚行にワンランクダウン。

 

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愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)愚者のエンドロール/米澤 穂信

 

C

 

 

氷菓』に次ぐ古典部シリーズ第2弾。

長編になったため前作より推理物としての密度は濃くなった。ライトなミステリーとして十分楽しめるレベルにはなったと思う。

テンポ良くサクサクと気軽に読めるのは○。事前にネタバレを食らっていて驚けなかったが、トリックも格段に向上している。

劇場の設計士が『十角館の殺人』の彼だったりといったお遊びも良い。

ただ、読んでいなくても問題ないとはいえ、ホームズの内容が解決に関わる(ネタバレなしと言っても差し支えないであろう程度)のは少し気になった。

ちなみにあとがきで言及されている「あじでしょう」については次回作あとがきに解答あり。

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クラインの壺 (講談社文庫)クラインの壺/岡嶋 二人

 

B

 

 

「クライン2」によるゲームの描写は、いきなり話が変わるため別世界に放り込まれたように感じさせる。そういったSF要素で読者を引きつけつつ、行方不明者の発生という本筋を進めていく。特に目立った欠点のない良作。

オチが少し弱いのと、単行本ではあった”契約書の汚れ”がないのが残念な部分か。

もっともこの本を評価するにあたって”仮想世界に入るという今となってはありきたりになってしまった設定にも関わらずしっかり楽しませてくれる””単行本の初出が1989年にも関わらず古臭さを感じさせない”という二点を伝えれば十分かもしれない。それだけで本書がいかに優れているかという事がおわかりいただけるだろう。

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陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)陽気なギャングが地球を回す/伊坂 幸太郎 <再読:新書→文庫>

 

A

 

センス抜群のジョークに思わずニヤついてしまう。

魅力的な登場人物、ぐいぐい引っ張られるストーリー、ここまで”おもしろい”という言葉がしっくりくる本も珍しい。エンタメのお手本のような作品。

難点はラストのオチがややありきたりで読めてしまう所。

だが、それすらも巧妙な伏線でカバーしている。

表紙やタイトルが少々取っ付きにくく感じるかもしれないが、ぜひ読んで欲しい一作。

 

 

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ドミノ (角川文庫)ドミノ/恩田 陸

 

B

 

 

一つ一つの物語はさほどでもないのだが、それぞれがつながったとたん一気におもしろくなってくる。テンポの良い文で書かれたお祭り騒ぎは読んでいる間ひたすら楽しい。

30人近くいる登場人物に個性を持たせ、うまく捌いているのも見事。

欠点らしい欠点はないのだが、しいて言うならラストが少しあっけない所か。これだけ広げた話をきちんとたたんだだけで賞賛に値するとは思うが。

こち亀のように、ちょっとしたできごとがあれよあれよと大騒ぎになってしまうのが好きな人はぜひ。

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仔羊たちの聖夜(イヴ) (角川文庫)仔羊たちの聖夜/西澤 保彦

 

B

 

 

麦酒の家の冒険』に次ぐシリーズ4作目。個人的にはタックシリーズ最高傑作。おちゃらけた雰囲気で引き込み、それを一変させる解決編・真相の意外性・小説としての主題、どれも他より頭一つ抜きん出ている。

覆される事実と一気につながる伏線に大満足。鳥肌物の狂った動機もすばらしい。

ただ、あまりの重さに人を選ぶような…。ここまで哀れな被害者もなかなかいないだろう。

ちなみに幻冬舎から新装版が出ているが、個人的には角川版が好み。影山さんの絵がいい味出してるんだよねぇ。

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