D
最初に読者へのメッセージを入れるやり方は『0の殺人』を思い出すが、こちらはうまくやってくれた。双子トリックという一種のタブーを、事前に読者に知らせる事で有効活用する試みは評価したい。
が、読み物としては並。
平易を通り越して味気なさすら感じる文章だが、2つの事件がどうつながりどう終わるかでモチベーションを保つ事ができる。
オチは綺麗にまとめたものの衝撃的とまではいかなかったか(メインも例の“逃げ”だろうし)。
『そして誰もいなくなった』のネタバレで1ランクダウン。
C
旅行記とそれに伴う人間関係が長々と書かれるが、核の部分は普通のミステリー。悪くはないが、特筆するような点もない。
長い旅行記というと『空飛ぶ馬』を思い出すが、こちらは人物にクセがあるせいかそう苦にならなかった。
ついでに言えば、そのおかげで多目の人物も覚えやすい。
あと、読んでいてなんとなく思った事だが、作者は色々な人物の思惑が重なって事件を複雑にしているという手法が好きな気がする(それとも古典推理小説全般がそうういうものなのか)。『オリエント急行の殺人』は彼女が書いたからこその傑作なのかもしれない。
C
友人の行方というちょっと変わった謎が主題(ホウェアダニットとでも呼ぶか)。
ストーリーがメインで、ちょこちょこ小さな謎解きが入ってくる。『依存』に近い感じか。ドロドロはなく、作者お得意のほろ苦い青春物だが。
この話の切ない点は、真相よりも太刀洗だろう。マーヤの事は勉強してまで理解しようとするのに、太刀洗に対しては思考停止的に無理解な主人公。彼女が作中で2度も繰り返す自分を冷たく見積もりすぎであるという言葉(P186・344)は、無関心を貫かれた彼女の悲鳴なのだと思う。
C
どんどんつながっていく伏線は近作にない満足感。
ただ、SF要素とミステリー要素の関係の弱さやストーリーに何の影響も与えないどんでん返し等、これ以前の作品に比べて一歩劣る。
あと、『七回死んだ男』について以前“この話のラストが美しいのは真相解明であると同時に愛の告白でもあるから”という意見を聞いたが、本作ラストのアレも同じ趣向だったのではないか。
つまり、サプライズより物語面での着地の良さが狙いだったのだと思う。あまりにも不可解かつ解釈困難な謎を残したがため裏目に出たが。
C
『占星術殺人事件』に次ぐ、御手洗シリーズ第2弾。 1作目を未読でも問題はないが、傑作なのでぜひ読んでいただきたい。
確かに意外ではあるが、このトリックはやりすぎだろう。
驚くより苦笑いするしかなかった。
途中については面白味こそないものの、前作のような読みづらさ・露骨に無駄な部分は見受けられなかった。
良くも悪くも薄味になった感のある一冊。ただ、前が濃すぎただけで1つの作品としてハードルは十分クリアしている。
あと、「全員、全部屋、念入りにやりましたよ。」(P219)と言っておいて「あなた方は私に遠慮して~」(P335)ってそれはないだろう…。
C
『ボッコちゃん』や『1999年のゲーム・キッズ』のようなオチのある小話的なものではなく、本当に短い小説という感触。
『猛烈社員無頼控』のようなギャグマンガ的な描写でも自然と情景が浮かぶ文章や、多彩な内容はさすがと言ったところ。
ただ、逆をつけば楽しみ所がよくわからない話に出会いやすい。『モーツァルト伝』は史実を改変しているのはわかったが、それの何がおもしろいのか理解できなかった(私が氏に疎いのもあるだろうが)。
しかし、センス抜群な表題作といい、皮肉のほとんどが今にも通ずるとは…人間がいかに進歩しないかである。
C
『ダレカガナカニイル…』をさらに複雑にした感じ。
おまけに説明が少しわかりづらかった。特に、時間の流れに関する部分では誰もが引っかかるのではないか。
時系列を無視して、それぞれの人物に何があったか個々の事実だけを見れば飲み込みやすくなるか。
なんにせよSF的にもミステリー的にも予想以上に手の込んだ作品ではあった。
余談だが、『ハサミ男』に似ていると思って読んでいたら、カメラのレンズを「バズーカ砲」と比喩していて苦笑させられた。
あと、3枚目のカラーイラストからさっするに、あれは学校の制服なんだよな?
C
イマイチ。
そもそもの謎かけが弱く、先が気にならない『動物園のエンジン』。
『サクリファイス』はミステリーとして調査に徹するわけでもなく、ストーリーもおもしろくない。解説(佳多山 大地)での解釈にはなるほどと思わされたが。
唯一及第点に達していたのが『フィッシュストーリー』。ちょっと変則的な形で夢が叶うのが良かった。
『ポテチ』は100ページもダラダラとやりすぎ。上手に使えば『チルドレン』の『チルドレンⅡ』並みに盛り上がりそうなネタだけに惜しい。伏線を張りまくろうとする意思は良かったのだが。
C
ネタは悪くないが、もったいぶりすぎた。
五十嵐がミカの部屋に踏み込んだ時点で全部ばらしていればなかなかに衝撃的だったろうに。 小出しにしたせいでパワーダウンしてしまった。
P580の第3段落の記述もおかしくないか?
満足感が薄いため、長々と書かれた物語についてももう少し短くならなかったのかと思ってしまう。村越とかもうちょっとチョイ役でも良かったのでは? 冤罪事件の長さを表現した、とも思いづらい。
同じ文を必要以上に何度も見せられた気がするのも気のせいだろうか?
ちなみに一部で“~者シリーズ”と呼ばれているよう(あえてこういう書き方をするのは、作者サイト『沈黙の部屋』でシリーズ扱いされていないため)だが、これだけ読んでもまったく問題なし。
終わりなき夜に生まれつく/アガサ・クリスティー(乾 信一郎)
C
タイトルセンスが〇。直訳の“終わりなき夜”より語呂もセンスもずっと良い。
ただ、そこ以外は凡作。
短編でもできた内容だと思う。
オチ自体はこれと同じだが、本作は明らかに推理部分に重きを置いておらず(私が事前にネタを知っていたのを差し引いても)衝撃度は薄い。ストーリーもそうおもしろいものでもない。
最初からネタをばらして進めるか、中盤までエリー視点で書くかした方が良かったのでは?
つまらなくはないが、物足りなかった。
稀に見る傑作。
A
おもしろい。
B
まあまあ。
C
標準ランク。人によってはB。
D
微妙。
E
読むのが苦痛なレベル。
F
つまらないを越えた何か。
×
エックスではなくバツ。よほどアレでない限り使わない。